大変遅くなりましたが
舞台報告!
西園美彌講演会「踊る、創る、喋る」、
入場者 112名!!
まさかまさか…こんなにたくさん…(T△T)
足を運んで下さった皆様、ありがとうございました。
平日昼間ということもあり、また試合やコンクールと重なり見に来れなかったりした方も多くいらっしゃいましたが、これだけの方が私に興味を持ってくださったというのは嬉しかったです。
なにか皆さんに伝わるものはあったでしょうか。
今回本当に多くの方に支えられ、一人ではなにもできないのだと、人との関係の大切さを深く感じる機会となりました。皆様の温かい励ましのお陰で初めての自主公演をやり遂げることが出来、言葉にできないほどの思いです。本当にありがとうございました。
…制作過程もブログに載せていきたかったのですが、そんな余裕は一切なく。SNSを利用して人の目に触れるようにバンバン宣伝ブログをアップすればいいじゃないかと他の舞台に対して思っていましたが、いや、これ、無理だわって分かりました(笑)
制作の人が別にいれば出来たかもしれない。でも中の人間はそれどころではないから、出来ない。難しい。理解できました。
さてここからはテーマ別に綴ってまいります。
西園美彌講演会「踊る、創る、喋る」
【上演プログラムと作品について】
今回の上演作品はソロ作品「more」5分、長編作品「優しい嘘」35分。
そして約1時間の講演会という内容でした。
メインはやっぱり「優しい嘘」だったのでこの作品について書きます。
作品のテーマは母娘の葛藤や自分自身との葛藤、親子、家族、愛情。
テーマに基づいて動きの素材探しをし、それをダンサーの身体を使いながらイメージを膨らませ、創っていきました。私と対で踊る矢島みなみちゃんとリハーサルを始めてたときは、彼女の身体は本当に振付家(私)の創作意欲を掻き立ててくれるため、楽しい!というものでした。
でもそれもすぐにトンネルへと突入。ぼんやりとしか浮かび上がらないシーンを具体化する作業が自分にとってとても難しかったです。本番まで時間も迫っている中、焦りばかりで非効率な時間と重たい空気に何度もくじけそうになりました。
…この「不器用な自分を人に見せる」という経験は本当に恥ずかしかったわけですが、見せずしては何も進まないわけで。
しかしながら、この「恥をかく」という経験は人間を大きく変えてくれる。辛かったけれど何度も自分の内側にあるものを掘り下げる作業をし、大きな包容力のある協力的なダンサーのみんなのお陰で少しずつ形ができ、結局直前まで(ゲネプロから本番の間にも!)変更を加えたりなどありましたが、作品を舞台に上げることが出来ました。
【出演者を決めたポイントと彼らから学んだこと】
個性が光る存在感と調和が保てる人、そして私との相性で選びました。
"人"で創っていく。
"人"が見えるように。
…作品を創りながら、これまで主にダンサーという立場にしかいなかった私は
「あぁ、振付家にはこういう風に見えているんだ」
ということを学びました。
出演してくれた3人のダンサー、三者三様に私を助けてくれて…
「あぁ~、こういう風にしてもらえたら嬉しい気持ちになるな~。優しい配慮、素敵。なるほどな~」とか(壮太郎くんありがとう)
「えー!そういうところまで考えてくれるなんて!ダンサーという立場ってそうなのね!」とか(みなみちゃんありがとう)
「そうそう、そうだよね、この自由さ、粗さ、純真、無垢な感じ、だよ。私もそれがいいー欲しいー。」とか(あおいちゃんありがとう)
…私はすぐに甘えたり言い訳ばかりになりがち。だからそんな自分を越えたくて自分を追い込ませる方向に向かわせたから、みんなにはそれに付き合わせることなって沢山迷惑をかけたと思う。でも私にとっては贅沢な時間でした。みんなありがとう。みんな大好き。
【自主公演、自主制作ということ】
振り付け、構成、出演。練習。音楽の選曲・編集、照明の演出。衣装や舞台美術のミーティング、発注。リハーサル場所の確保。チラシ・チケット・パンフレットのデザイン、発注。ビラ配り、宣伝活動。スタッフの確保と配置。
今回、よく分かったんです。
…私、向いてないってことが(笑)
このへん、誰かサポートしてくれる人が1人でもいてくれるといいと思いました。次回(はあるかな?あるならば)ちゃんと人を雇うぞ。話し相手や相談役、必要。
【なぜ自主公演にしたか】
私は舞踊家・ダンサーとしての"自分の色"を出すためにはまず「自分という人間を知る」ことが必要だと思いました。そしてそのためにはこうして無理矢理にでも「何か形にする」必要があるなと。
だから全部私が責任を取るから、全部私のやりたいようにしてみる、そうしなきゃと思い、そういう環境を強制的につくることで成長しようしました。
…自慢してるつもりも美化してるつもりもありません。やり方としてはあまり良くないと思う。でも一度自分でやってみなきゃ始まらないし、人に何かをお願いする、電話一本の小さいことでも、物事の一歩先を想像できない私は経験しないと理解ができない。だから、これで良かったと思う。
【講演で話したことーその1】
講演会では、「優しい嘘」の作品解説を行いました。
「解説をした方がいいですかね?聞きたい方、手を挙げてください…あ、結構いっぱいいる!」
ということで解説をしたわけですが解説を言う前にあえて以下のことを加えました。
"多くの振付家は、作品の内容を詳しく語ることを好みません。それは、観る側の想像を奪うことにもなるからです。自由な見方、自由な解釈でいいんです。作者の意図を完璧に汲み取りたいと思う方が多いと思いますがこちら側としてはそれは求めてなくて、あんな風にも見えた、こんな風にも見えたっていろーんなものが連想されるような作品が、私は良い作品だと思っています。"
「ダンスを見慣れていない人はきっと見方が分からない。食わず嫌いな人がきっといるだろう。でも少しでも説明して、私なりにこういう側面があるんだよって伝えられたら、作品を観たときに分からなかったで終わらず何かを持って帰れるようになったり、ダンスに興味を持ってもらえるようになるかもしれない。…そうなってほしい。」
…私は大人になってから徐々にこの世界に入り、ダンス界の外側にいる立場だったので理解するまでに時間がかかったという経験がありました。この部分を伝えたかった。だからこうして「西園美彌“講演”会」にしたのです。
「この話が聞けて良かった」という感想が結構ありました。よかった。伝わって。
【講演で話したことーその2】
もう一つ大きな話題は、この作品に込めた私の"母への想い"でした。
「優しい嘘」…初演時は、大きな負の感情から出来上がった作品でした。母を求めるがゆえの大きな絶望感。そのため母は当時作品を見に来なかったし、私も誘いませんでした。
初演直後は正直、「もう二度と踊ることはないだろう、きっと踊れない」、そう思っていた作品でした。でもこの2~3年に私の心境の変化があり、この作品をより深め、リメイクすることに挑戦しました。
この「new優しい嘘」に込めていた想い、講演中に言葉にしました。
「いつか、お母さんと仲良くなりたい。
お母さんに、親孝行がしたい。」
…泣きそうになるのをグッとこらえながら。
(この言葉を言った後、「実は、ここに、お母さん来てます」と言うと会場にどよめきが起こるという(笑)
面と向かっては言えない思いを、この場を利用して伝えることができました。
【終演後、家族と】
姉もドイツから子供たちを連れて帰国しており、家族3人でカフェで少しだけ話をすることができたのですが、その時の母の一言。
「よく頑張ったね」
…そう、本当は頑張ってる姿を、誰よりも、お母さんに見てもらいたかった。
作品を誉めてもらうよりも、私はこの言葉が聞きたかった。
そう言われてすぐに私はその場を去ったのですが、清々しい心地になったのを覚えています。
【余談・・・】
ずっと心に抱いていた思いを吐き出した私。心身に小さな変化が。
私はずっと
― 誰にも頼らない。一人で生きていく。強くなる。だからもっとしっかりしなきゃ。頑張らなきゃ。努力しなきゃ… ―
と思ってきました。それがふと、
― 私には、帰る場所(福岡の家…お母さん…)がある(いる) ―
という言葉が浮かび、その瞬間、自主公演の過程で自信を失い、大きく下を向いていた心の中の自分がふと顔を上げたんです。
「そうだ…じゃあ、思いっきり挑戦する生き方をしようじゃないか!」
…挑戦は今までもしてきましたが、何か少し違う感覚なのです。
少しの違いだけど、これはきっと大きい。
「楽しむために」という意識が芽生えたのかもしれない。やっと。
私は、また一歩、大人になりました。
だから、いろんな意味で、この自主公演は成功だったと思います。
【約3週間空いてしまったこと】
いつもならば舞台2~3日後には報告ブログをアップしてましたが、エネルギーチャージに時間がかかっていまいました。
4月に入り新しいことに追われていたのは事実ですがそれはあまり関係なく、書くことへの意欲が湧いてこなかったのです。でも、じっくりこの経験をこの期間に身体に染み込ませることか出来たように思います。
3週間の間に、やりきった後でふわふわした所在なき心、暗雲の立ち込めた心に一筋の光りが射し込んでくる出来事がいくつもありました。オーディション通過、新しい仕事のオファー、新しい発見、新しい出会いetc...
これは、一旦、自分が壊れ、そしてそこから再構築をしはじめたのかなと。
前よりも強くなれたというか…自主公演を達成する前とは違う自分になっている気がします。
新しい私は、次は一体なにを起こすのでしょう。
楽しみです。
【最後に】
タイトなスケジュールで照明と舞台を作ってくださったカピオの皆さま、ご迷惑をおかけしましたが本当にありがとうございました。
出演してくれたみなみちゃん、壮太朗くん、あおいちゃん、本当にありがとう。みんなと創れて、楽しかった!
麻衣子さん、いつもいつも素敵な衣装や美術を作ってくれてありがとう。これからも頼りにしています。
スタッフとして尽力してくれたかすみちゃん、美保、森くん、本当に心強かったです。ありがとう!
直前の要望にも即座に対応してくださった木村さん、素敵なアナウンスをありがとうございました。
たくさんの応援やサポートをしてくださる生徒の皆さん、皆さんからの励ましの言葉にいつも救われます。ありがとうございました。
遠くから来てくれたお母さん、お姉ちゃん、オスカー、ミラ、見に来てくれてありがとう。
西園美彌はこれからも精進してまいります。
皆様に生かされていることに感謝しながら今後も頑張りますので、どうぞよろしくお願い致します。
公演の写真をお楽しみください。
(撮影:第二映像企画)
― 西園美彌講演会「踊る・創る・喋る」―