人間の成長は突然スピードを上げることがある。

 

まばらにあった小さな点(成長)が、あるタイミングに線になる。繋がって円になって、ぐるぐる回り出す。

 

昨日はそんな一日だった。

 

・デュオ1、集中力と体力の5分弱、初めて最後まで踊りきれた!

・デュオ2、抜け感と軽さが出てきたし揃ってきた!

・出来なかった技が突然出来た!

・ユニゾンの感覚が掴めてきた!

 

昨日は天気も良くて身体が軽い感じがしたし、最近買った新しい練習着の着心地も良い感じにテンション上がっていた。毎回のリハーサルは皆それぞれに自分の役割を全うしようとしている空間。瑠璃さん(振付家)の気遣いもキャラクターも、ダンサーのみんなに対しても、日々愛着が湧いてくる。

 

すごく素敵。面白くて新しい。本当にたくさんの人に見てほしい。

 

……………

 

昨日の出来事。

ダンサー(以下、Aと表記)とユニゾンの微妙なニュアンスを練習していたときのこと。

 

 

私は、彼女を泣かしてしまった。

 

 

Miya 「Aちゃん、そこって、こんな風じゃなかったっけ?」

A 「え、どこ?」

Miya 「たしかここはこんな風だったと思う。」

A 「あ、そうか。こうしてこうして…」

Miya 「それ、そんなに肩上げなくない?」

A 「え、私上がってた?」

Miya 「うん(笑)」

A 「あーもうやだ!!こういうのホント苦手。できない!」

Miya 「大丈夫だよ。練習すれば(^^)この感じが出来るようになったらすごい成長すると思うよ。」

A 「あー…やだ…もう…」

 

そして彼女は突然泣き出してしまう。

…彼女の中で、なにかを越えてしまったのだろう…。周りにバレないように(瑠璃さん以外は皆気づいていたけど)しながら。

 

彼女は誰よりもよく練習する子だ。私よりも年下だが、もうダンスをやめようと思って最後かなと思ってオーディションを受けたそうだ。彼女とはデュオを踊るし、帰りの2時間弱の道のりはいつも語り合っている仲。そんな彼女のこのような姿を見るのは初めてだった。

 

その後しばらくして、彼女は正気を取り戻し、私とのデュオシーンでも普通になってくれた。彼女に出来て、私がずっと出来なかった技がこの日初めて出来たとき、二人でハイタッチも。周りは皆、優しい気遣いをしていたと思う。

 

この日もいつもの調子で私とAはハイテンションで語り合いながら帰った。

 

……………

 

私があの時あの指摘をしたことは間違ったとも言い過ぎだったとも思っていない。良い作品のために、皆で揃わないといけないところを揃えたり、振付家が求めているすぐに壊れてしまうガラスのように繊細な部分を追究しようとする姿勢は自分も作品の一部なのだから無責任に放置しないで、お互いに高め合うことをしていきたいと思っている。

 

だが、誰にでもキャパやペースがある。

 

私は彼女を泣かせてしまったことは大きなショックだった。

振付家にソロを見せていたときもAは思わず泣いてしまっていた。「すみません、私がさっき、、」と振付家に伝えたけれど、いつもは明るく振る舞って人の見てないところで落ち込むの彼女だからショックだったと思う。

 

……………

 

昨年の「ドクターコッペリウス」の初音ミクのモーションキャプチャ撮影の時のことだ。

 

撮影当日に振り付けとニュアンスに大きな変更が出た。トゥシューズを履いて踊るシーンで、私はそのシーンが一番緊張して不安でいっぱいだった。辻本さん(振付家)曰く、私はその日最初からかなり固かったらしい。前日も不安でいっぱいで家で泣いていた。緊張、バレバレ。

 

変更になった振付で、いざ撮影1回目。大きな失敗もなく、辻本さんは、「うん、ええんちゃうかな」と言ってくれた。

でも私は、そこに映る初音ミクは、この日のために練習してきた"私の踊り"には全然程遠く、ただ振りをなぞってるだけの中身のない踊りに見えた。

 

…心がない…

"私"がそこにいない…

 

これが私が踊った初音ミクとしてずっと残るものになるのは嫌だと思った。

 

この短時間で、練習して合わせてきた次元の演技にまで持っていくには、どのチャンネルだろう…どの感覚だろう…落ち着け、落ち着け…

 

不安もMAXになったのが分かってパニックになりそうだったので、アシスタントのももちゃんに「ももちゃんごめん、…ハグしていい?」と彼女にぎゅっとしたら、張り積めていた緊張が緩んでしまい、私は号泣してしまった。

撮影は一旦止めることに。辻本さん、撮影スタッフの方々、プロジェクトメンバーの方々を待たせてしまうことになるけれど全ては私にかかっているので、「すみません…もう一度バーレッスンさせてください。」とお願いして待ってもらった。

30分後、もう一度仕切り直して、振りを確認して、「大丈夫です。出来ます!」と本番に臨み…一発で成功させた。

 

……………

 

これは自分の中で美談としてとらえていた。

しかし昨日の一件のあと、これは美談でないことに気がついた。

 

あの時私は周りに対して、どれだけの心配とストレスを与えていたのだろう、と。

 

泣くこともキレることも

当事者はいっぱいいっぱいだ。メンタルの強さは持って生まれたものがあると思う。

 

でも私のは、甘えだ。

恥ずかしい。恥ずかしいとも思わなかった自分が恥ずかしい。

 

 

私はAに対して、今後は様子見しながら、もしかするとずっと、彼女の踊りへの指摘をしないかもしれない。一緒に仕事をしようという気になれないかもしれない。彼女は悪い人間ではない。むしろ良い子だ。だが彼女には…と。

 

 

初音ミク撮影のあの時、私は泣いてしまった。

 

もう二度と、仕事は来ないかもしれない。

 

あのような場で、私は泣くべきではなかった。

 

現場にいた先輩(私を初音ミクに選んで下さった方)は後から私にメールで「明日(2日目)は涙禁止だからね!」と言ってくれた。その真意が、今やっと分かった。

 

……………

 

事あるごとに弱音を吐き、涙を見せることがあった私。

 

なんて甘えた人間だろう。

 

私は人が、子供でも大人でも、涙を見せることがあったとしたら、もしまたAがいっぱいいっぱいになったとしたら、その気持ちがよく分かるから、不安で不器用で自分がとことん嫌になる気持ちは本当に分かるから、共感して、受け入れてあげたいと思う。

 

 

 

ただ、

 

私自身は、

 

もう人前で泣きたくないと思った。

 

 

大人になろう。