≪魔女が人を見るとき≫
■骨を見る
(骨格上の違和感がないか、アライメント崩れ具合、関節のハマり具合、関節の動き方)
■筋肉を見る
(突っ張っている、伸びが悪い箇所はないか、どこの筋肉をメインに使っているか、意識と筋肉との繋がりはあるか)
■全体のエネルギーを感じる
(エネルギーフロー/運動連鎖、全身が調和しているか、部分的にやたらと使っている/全然使っていない場所を探す;意識の有無)
■動作タイミングを見る
(動作の調和、パワー発揮の効率の良し悪し)
■美しいか否か
(エラーはないか、スピードが変化する瞬間、全体の調和、細胞の活性度:輝き)
≪どうやって培ってきたのか≫
「人の身体の意識の有無が見える」力は子供のころから無意識に発達させてきたもの。
また、クラシックバレエでは筋肉で力任せに無理矢理やるような指導はほとんどなく、物理や身体の仕組みにのっとった指導が一般的であるため、自然と身体の使い方とその方法論は身についていたかと思います。そして友達から「コツを教えて!」と言われることも多かったし、上手い人・下手な人、身体が柔らかい人・硬い人、手足が長い人・短い人、太っている人・痩せている人、男性と女性など、比べたり分析するのは誰かに言われたのでもなくずっと行ってきました。
それを筑波大学体育専門学群での授業で解剖学を学び、筋肉の性質や付着の仕方、場所、関連性、名前を知ったことで、具体的なイメージのある筋肉のついた人体という観点で見れるようになりました。
また、スポーツバイオメカニクス(運動物理学)の分野で骨、棒人間として人体を分析するようになり、重心や地面反力、関節トルク、運動エネルギーについての観点で見ることを学び、生身の身体でも地面反力の大きさや方向が見えるようになりました。分析と考察、文章化する力を養いました。
それら知識と経験を、卒業後自分が踊りながら、自分の身体で人体実験をしたり、感じたり考えたり試したりして、理論と感覚とをつなぎ合わせるようにしてきました。
≪美への観点≫
「美」への観点は踊りの世界で鍛えられてきました。
バレエもコンテンポラリーダンスも、芸術の世界は「美しさ」を生み出し、お客様にプレゼンテーション(伝える)というものが最大の目的です。
「美しくない」「上手くできていない」「もっと滑らかに」「意識が抜ける瞬間をつくらないで」・・・何度も何度も言われながら練習を重ねました。その実体験が役に立っています。
≪「目」を養うには≫
私は自分がこのように身体を通して得てきたことが大きいので、ご自身が自分の身体と向き合うことを質問者さんにはお勧めしたいです。というかそうあるべきでは?と思う今日この頃です。
自分の身体でやってみる。現在選手としてやられているとのことなので、今のその経験、成功も失敗も、喜びも悔しさも、さまざまな試行錯誤はすべて指導に生きると思います。
できないことが沢山・・・。だったらめちゃめちゃ考えますよね?
私は「○○が出来ないです。」という人の気持ちはだいたいわかります。ほとんど通ってきた道なので。
硬い身体の人の気持ち(大学院時代、研究に没頭し1か月間身体を動かさないというときもあった)、
太って重たい身体の人の気持ち(大学生の時は丸々太っていた、お肉が邪魔する感覚、感度が鈍い感じ)、
痩せている人の気持ち(身体の軽さ、敏感さ)、
身体能力めっちゃ高い人の気持ち(そういう時期もあった、
関節の潤滑油たっぷりな感じ)、
筋肉隆々の人の感じ(そうんな時期もあった、つい反応して使っちゃう感じ)。。。
選手に寄り添えるコーチって、やっぱり選手ファーストであったり、選手に共感できる部分がたくさんある人のことなんだと思います。まずは自分のことをいろんな角度から見て、深く深く知ることから始めてみるのもいいかと思います。
どんな個性を持っているのか?長所は?短所は?好みは?受け入れられないものは?変えられそうなものは?変えられなさそうなものは?・・・など。
自分を変える事ほど難しいものはないと思います。自分を強くしたい・成長させたい・今までの自分から脱却したい、なのにできない…という経験が指導者になったとき大いに役に立つと思います。
≪魔女がやってきたこと≫
バレエ・水泳・バレーボール・コンテンポラリーダンス・ストリートダンス、ジャズ・社交ダンス・古武術・ピラティス・ヨガ・アレキサンダーテクニック・フェルデンクライスメソッド・ヤムナ・GAGA・野口整体・弓道・柔道etc.(体験や経験くらいのものも含む)
魔女の「目」は指導を始めるようになって(つまり差し迫った状況に置かれたからこそ) 開花し始めました。
意味不明なもの、美しいと言われるけどわからないもの、強いけどなぜ強いのかよくわからないもの、それらはダンスの世界でたくさん見てきました。(つまりダンスの世界で残っている人々はみな超人だったーと思う笑)
“一流のもの”をエネルギー体として感じながら間近で見てきた経験の蓄積が大きかったと思います。それにダンスはとても高速で複雑です。考えることが多かった私ですが、それでも“圧倒的なもの”は感覚へアクセスしてきます。
そうした“圧倒的なもの”をたくさん見る事は選手になるにしろ指導者になるにしろ大事だと思います。
私は指導においても感覚や直感もフルに使う必要があると思っていて、それは完成形やゴール、目標物が分かっていないとあっちこっちに軸がブレる指導になると思います。
なので、一流を知ること。
≪自由でクリエイティブな発想力≫
いろんなことを書きましたが、私がいま実際に行っているセミナーやセッションなどで個別指導を行う時の見方は、自分が「無」になることです。
先入観や予測・予想を一切しないでエラーのみを見つける。
そのエラーから考えられる原因を様々な観点から分析する、という手順です。
そして原因が分かったら対処法を考える。
そしてそのとき必要なのは自由でクリエイティブな発想力です。
「人間の身体はこうでしか動かない」といった固定概念を持っていると、その人にあった処方はできないです。人間はある程度パターンがあるけれど、いつでもそのパターンに当てはめようとしてしまってはいけません。そういう指導者には魔女と関わった以上絶対にならないでください。
あらゆる動きを知っておく、経験しておくことで、発想は豊かになります。
≪まとめ≫
自分の身体を通して学ぶこと、豊かな感覚を自分自身が養っておくことで「目」は発達する。そして「美しいもの」「本物」「圧倒的なもの」を間近でたくさん見る事こと。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考にしていただけたら幸いです。